仕事のあれこれ、京のあれこれColumn

2022.06.30

3年ぶりの祇園祭 山鉾巡行に 商売繁盛を願う

久々の祇園祭に人も街もどこかソワソワ

コロナ禍となって早3年。今年もあつ〜い夏がやってきました。京都はご存知のとおり三方を山に囲まれた盆地なので、周囲4府県の熱気を吸い込んでいるのではないかと思うくらい猛暑になります。マスクもドロドロです(涙)。

でも、今夏の京都は久しぶりに盛り上がりますよ。なぜって、祇園祭の山鉾巡行が3年ぶりに催行されるんですから! 待ちわびた朗報でした。

そもそも祇園祭は平安初期(869年)、疫病退散を祈願して行われた祭礼。その当時の国の数と同じ66の矛を立て、大内裏の禁苑(庭)である神泉苑(しんせんえん)に神輿を送ったという記録が残っています。そこからさまざまな変遷を遂げて令和の現代に至るのですが、今も行われている神輿渡御(みこしとぎょ)は平安期からさほど変わっていないのだとか。だとすれば祇園祭は1000年以上受け継がれてきた筋金入りの疫病退散祭。あっちこっちで同時多発的に厄祓いをするので、もはやフェスです。コロナ禍だからこそ祇園祭を望む声も多かったことでしょう。

4月20日に山鉾連合会から発表されたリリースには、「絶え間ない努力によって維持されてきた山鉾行事を遂行すること」「次代へつなぐことが責任であること」「技術の伝承を途絶えさせないこと」などが催行決断の理由に挙げられていました。久々にしびれましたね。これぞ京都、祇園祭。

日本三大祭の一つでユネスコ無形文化遺産にも指定される祇園祭の山鉾行事ですから、その知名度の高さ、関わる人の多さ、しがらみ等を背景にいろんな意見が交わされたのは言うまでもありませんが、祭りの歴史、伝統を受け継ぎ、後世へつなぐことに重きを置いたんでしょうね。コロナの不安要素はあれど、文化を、技を、人の連携を途絶えさせてはいけないという心意気がにじむ文面で、胸が熱くなりました。英断と思います。京都の夏は地獄のような暑さですが、今夏は例年よりも2度ほど気温が上がりそうな予感…。まぁ、よしとしましょう!

前置きが長くなりましたが、そんな祇園祭の特徴や見どころはさまざまな媒体で山ほど書かれていますので、ここでは京都で起業した方、スタートアップの景気づけになりそうなおすすめ情報を書いていきます。

鯉が滝を登って龍に大変身

“登龍門”という言葉、よく目に、耳にすると思います。成功へと至る難しい関門、あるいは立身出世のための関門といった意味で使われる言葉ですが、語源は中国のことわざ。中国北部を流れる黄河に「龍門の滝」という激流があって、そこを登り切った鯉は龍となって昇天し、出世開運の神として祀られると言い伝えで、端午の節句の鯉のぼりもこれに因みます。

この故事をモチーフにしているのが祇園祭の「鯉山(こいやま)」です。素戔嗚尊(すさのおのみこと)を祀る社殿と全長1.5mの巨大な木彫りの鯉を乗せた山で、立身出世のご利益があるとされています。社殿の前には龍門の滝に見立てた幅約30cm、長さ1.5mほどの麻の緒が垂らされているのですが、それを必死で登ろうとする巨大な鯉ちゃん。滝のサイズを優に超えたビッグボディがなんだか微笑ましいです。

この勇壮な鯉を彫ったのは日光東照宮などを手がけた名工・左甚五郎(ひだりじんごろう)と伝わります。1枚1枚精巧に彫られたウロコや大胆に湾曲した体、大きなヒレ、逆巻く急流など、私たちの想いを乗せて激流をダイナミックに登っていってくれそうな安定感と躍動感。思わず手を合わせたくなります。

巡行に先立つ宵山(7/21〜23予定)の会所飾りでその姿を一望することができるので、ぜひ鯉さまの勇姿を拝んで、逆境も乗り越えるパワーをもらってください。

多彩な授与品も楽しい

祇園祭の山鉾見学の次に楽しいのが授与品のお買い物。中でも厄除けちまきは疫病退散のお守りとして京の家々の戸口に吊るす風習があることから、人気の授与品です。1つ1000円前後で、今年、巡行の復興を果たす「鷹山」も含めた34の全山鉾で販売しています。

「鯉山」でも、ちまきをはじめ“登龍門守”と書かれた立身出世お守りや、鯉の滝登りを躍動的に描いた手ぬぐいが授与されます。この手ぬぐい、渋くていいデザインです。縁起担ぎにいかがでしょう。

ちなみに授与品はそれぞれ山鉾のご利益に因んでいて、例えば聖徳太子を御神体とする「太子山(たいしやま)」は学業成就。和泉式部に恋をした平井保昌を御神体とする「保昌山(ほうしょうやま)」は縁結びのご利益があります。前者は勉学に励む学生さん、あるいはその家族に、後者は恋する女子たちに大人気なのです。
他にも夫婦和合や親孝行、安産祈願や芸事上達、肩こり腰痛などなど多彩。あてもなくそぞろ歩いて山鉾を見学するのも楽しいですが、猛暑の最中ですので、あらかじめご利益、ほしい授与品などをチェックして赴くことをおすすめします。

■Information

祇園祭山鉾連合会(http://www.gionmatsuri.or.jp/

鯉山

Columnist

五島 望 Nozomi Goto / ライター・編集企画業

京都精華大学卒。東京で漫画編集者を経て京都でライター、編集企画業をしています。このたびSTART UP KYOTO運営事務局さんから「京都をテーマにコラムを書いて欲しい」とのご依頼を受け、筆を取りました。テーマがテーマですので武者震いしますが、知っていると京都の見え方、過ごし方がちょっとおもしろくなるかも、というような内容をお伝えしていけたらと思っています。お仕事の参考になれば幸いです。よろしくお願いいたします。

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五島 望 Nozomi Goto
ライター・編集企画業

京都精華大学卒。東京で漫画編集者を経て京都でライター、編集企画業をしています。このたびSTART UP KYOTO運営事務局さんから「京都をテーマにコラムを書いて欲しい」とのご依頼を受け、筆を取りました。テーマがテーマですので武者震いしますが、知っていると京都の見え方、過ごし方がちょっとおもしろくなるかも、というような内容をお伝えしていけたらと思っています。お仕事の参考になれば幸いです。よろしくお願いいたします。