2022.12.09
長年京都に住んでいると定番の手土産の1つや2つがあって、その都度、あの方にはこれを、この方にはこれを、とその方の人となりなどを思い浮かべながら、たいていはお茶やお菓子を選ぶのですが、近年そのスタンスがちょっと変わりつつあります。1つはマンネリ化。同じ方に同じような物をあげ続けるのは芸がない。もう1つは後期高齢者の増加。歳を重ねれば重ねるほど、何かと甘い物とは縁遠くなるもの。時節であれば中元、歳暮で届いたお菓子、お茶などがキッチンに溢れかえっている、なんてこともあるでしょう。病を抱え、糖質を気づかう人も増えていて、それを知りながら無邪気に「甘いもんをどうぞ」なんて言った日にゃあ、間違いなく“気が利かない”レッテルを貼られます。
仕事でお世話になった方へ、あるいは知人、友人との会食、久しぶりの帰省と、何かと手土産が必要となってくる年の瀬。今回は定番のお菓子やお茶、漬物以外の食品でおすすめの手土産5品を紹介します。常温保存ができて日持ちする、コンパクトで軽量だから遠方への持参もラクラク。そして何より京都らしさが漂う、そんな精鋭たちです。せっかく差し上げるのだから、選んで楽しい、もらって嬉しい、食べておいしい!の3拍子でみんなハッピーとなりますように。参考にしてみてください。
日頃お料理をされている方、ちょっとグルメな方に差し上げるのがうね乃の「おだしパック じん」。うね乃は明治36年(1903)創業の出汁メーカーで、近年は同社の出汁を使ったおでん料理店やデリカテッセンも運営されています。昔ながらの製法にこだわった無添加のお出汁は大変シンプルですが、一本の芯が通ったような雑味のない美味しさです。
「おだしパック じん」は全部で4種の味があり、濃いめの出汁がひけるのは赤、洋風出汁は緑と、それぞれのパッケージが色分けされています。この前あの人には黄色をあげたから今度は赤にしようか、そんな選び方ができるのも楽しいです。百貨店のスーパーをはじめ市内の一部スーパーでも販売しているので街中へ行かずとも買えるのも助かります。
他府県の方への贈り物にしばしば使うのが湯葉です。京都市の地下には”水瓶“とも称される良質な地下水が豊富にあり、それが京の食文化の礎となっているのですが、お豆腐もその一つ。昔ながらの街の豆腐店から百貨店に出店するような有名店まで、さまざまなお豆腐屋さんが京都にはあり、それぞれにおいしいのですが、さすがに豆腐は要冷蔵の生物。送るにも受け取るにも気をつかいます。そこで思いついたのが乾燥湯葉です。湯葉は豆乳を加熱した際に表面にできる膜を引き上げたもので、いわばお豆腐の親戚のようなもの。程よい弾力と大豆の滋味があり、わさび醤油でシンプルに食べるもよし、鍋料理や味噌汁に入れてもよし。ポンと入れるだけで京風になるから便利です。しかも乾燥湯葉なら日持ちもしますし軽量ですから、贈る方も気兼ねしません。
四条堺町の交差点を北へあがった千丸屋さんの乾燥湯葉も美しいですが、私は西陣にある大島家さんも好きです。自宅用には割れ湯葉がおすすめです。
大正期に大阪で発祥し、人気を博した“カフェー”が嚆矢となって、昭和初期から京都でもミルクホール、そして純喫茶が続々と開業しました。とりわけ京都は学生が多い街ですから、そうした風土が支えとなって今もレトロな名喫茶が多く残っているようです。寺町専門店会商店街に店を構えるスマート珈琲店もその一つ。自家焙煎豆を使用したコーヒーやホットケーキ、オムライスなどの洋食が人気で、オープンと同時に行列ができる名店です。
同店オリジナルブレンドコーヒー豆を新鮮なうちにパックした「ドリップパック」はちょっとした手土産に好適です。シックな朱色地に白抜きで屋号が付してあるパッケージデザインも清々しく、京都の正統派喫茶店の誇りが漂います。同じデザインのオリジナル収納缶もかわいいのです。
あっさりとした和食のイメージが強い京都ですが、一方でこってりラーメンや本格アジア料理の店も多い京都。思いのほか刺激的な料理も定着しているように感じます。そんな背景からおすすめしたいのが山田製油の「ごまらぁ油」。一番搾りの胡麻油に国産唐辛子や山椒、八角などのスパイスを加えたラー油で、辛味だけでなく香り、深い味わいをもたらす一品。餃子や寄せ鍋、冷奴、お好み焼きなど、ちょっと味を変えたいな、というときにいい仕事をしてくれます。
同じ辛味で言うと、京都は七味唐辛子もレベルが高いです。こちらも香り、風味が豊かで、品の良い余韻が特徴。私が好きなのは北野白梅町近くにある長文屋さん。その場で好みの七味を調合してくれる名店です。
全国に比して大学数が多く、学生の街と称される京都ですが、その筆頭と言えるのが京都大学でしょう。京都大学の百周年時計台記念館1階にある京大ショップでは、京都大学オリジナル文具をはじめ、ネクタイや茶碗、チョコレートなどあらゆるグッズが販売されているのですが、中でもおすすめが「総長カレー」です。
「総長カレー」は、京都大学第24代総長の尾池和夫氏プロデュースによるビーフカレーで、尾池氏が総長を退任された今でも京大内のカフェレストランで提供され続けている京大の看板メニュー。それを大胆にもレトルトパック化し、「総長カレー」と冠して売り出しているわけですから、なかなかのお商売上手です。名前のひびきもいいですよね。アカデミックで、それでいて親しみがわくネーミング。京大生の気分も味わえそうな1品です。
以上が定番を外した京土産5選です。こうして書いてみるとマニアックなところも含めてメリハリのあるラインナップとなりましたが、本当はもっとたくさんあるんですよ。でも、それはまた何か機会にご紹介していきたいと思います。
うね乃→WEBサイト
千丸屋→WEBサイト
大島家→WEBサイト
スマート珈琲店→WEBサイト
山田製油→WEBサイト
京大ショップ→WEBサイト
京都精華大学卒。東京で漫画編集者を経て京都でライター、編集企画業をしています。このたびSTART UP KYOTO運営事務局さんから「京都をテーマにコラムを書いて欲しい」とのご依頼を受け、筆を取りました。テーマがテーマですので武者震いしますが、知っていると京都の見え方、過ごし方がちょっとおもしろくなるかも、というような内容をお伝えしていけたらと思っています。お仕事の参考になれば幸いです。よろしくお願いいたします。
京都精華大学卒。東京で漫画編集者を経て京都でライター、編集企画業をしています。このたびSTART UP KYOTO運営事務局さんから「京都をテーマにコラムを書いて欲しい」とのご依頼を受け、筆を取りました。テーマがテーマですので武者震いしますが、知っていると京都の見え方、過ごし方がちょっとおもしろくなるかも、というような内容をお伝えしていけたらと思っています。お仕事の参考になれば幸いです。よろしくお願いいたします。
お気軽にご相談ください。
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